「日本近代音楽館」が2010年3月に閉館
「日本近代音楽館(東京都港区)が、来年3月をもって閉館」というニュースを今日の夕刊で知り、大ショックを受けている。
日本近代音楽館は音楽評論家・遠山一行氏が遠山音楽財団付属図書館として1962年に開設、1987年に現在の名称となった。日本の作曲家の自筆譜10万点をはじめ、書簡、原稿、プログラム、録音資料など、その資料は全部で50万点にも及ぶという施設だ。このような凄い施設をこれまで一個人の力で、よくここまで続けて来られたものだ、と心から思う。ただ上野・奏楽堂の別館が閉鎖されたあたりから、私も日本近代音楽館の運営について、少なからぬ危惧の念を抱いていた。数年前、国会で公明党の議員が「日本近代音楽館がやっているような事業は、本来国が責任を持って行なうべき性格のものではないか」と質問したこともあり、私はそのような可能性に淡い期待を抱いていたのだが、事ここに至り「ついに、来るべき時が来た」と、万感迫る思いだ。幸い明治学院が引き取り先として決まっているという事だが、果たして今後どのように推移していくのだろうか。
私が日本近代音楽館に初めて足を運んだのは、今から10年ほど前のことだ。橋本國彦の「天女と漁夫」という管弦楽作品の演奏用譜面作成を頼まれた事がきっかけでこの作曲家に興味をもち、「何でも東京タワーのすぐそばに、日本の作曲家の自筆譜をいっぱい保管している施設があるそうだ」という事で訪れたのだ。
そこは私にとり、まさに別世界であった。
これまで日本作曲界を担って来た数多くの作曲家の自筆譜が、マイクロフィルムでいくらでも閲覧出来る。また初演当時の貴重な音源なども、惜し気も無く聴かせてくれる。日本で初めてヴァイオリン協奏曲を書いた呉泰次郎という、聞いた事もない作曲家の「主題と変奏」という管弦楽曲のSPを聴いた時、私は目の前に先人の息吹が大きく拡がるのを感じた。こんな貴重なSPをかけてもらっていいの? 溝が減ってしまうでしょ・・・と心配しながら・・・
また日本近代音楽館は、かつては申請さえすれば作曲家のご遺族の連絡先を教えてくれ、興味のある作品の自筆譜の複製もしてくれた。こうして私は日本近代音楽館で次々に様々な過去の日本の作曲家たちと出会い、またご遺族の許諾を得て、何曲かは演奏のためのパート譜をも作らせていただいた。
日本近代音楽館の職員の方々は皆、とても親切だった。
「信時さん」という方がおられたので「ひょっとして?」とお尋ねしたら、案の定「海ゆかば」の信時潔氏のお孫さんであった。(この方には本当にお世話になりました) 運営スタッフの小宮さんは、安部幸明、尾崎宗吉、清瀬保二といった作曲家たちに関する貴重な資料を、何と無料でお送りくださった。また事務局長の林淑姫さんからは、作品の権利関係や手順などについて、時には厳しい示唆もいただいた。
本来は国や公共施設が行なうべき事業を、限られた予算 (それでも年間5000万円かかるという) の中で続けて来た日本近代音楽館の苦闘は、おそらく想像を絶するものであったに違いない。
最近は全国プロ・オーケストラのライブラリアン会議と共同で「日本の管弦楽作品のデータベース作成」に取り組むなど、日本近代音楽館は今もその使命を果たす努力を続けている。願わくばこうした貴重な事業が明治学院に引き継がれた後も、さらに発展して行く事を私は願って止まない。
「ありがとう、日本近代音楽館!」・・・・警察官が盾を持って常駐するロシア大使館の前を抜け、ひんやりとした同館の玄関を訪ねる時のほのかな緊張感を、私は永遠に忘れない。
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コメント
日本近代音楽館、恥ずかしながら知りませんでした。。。
知った時が閉館のお話なんて、とても残念です。
日本の音楽の大切な歴史。
国が率先して保護しても良いのでは・・。
マンガも良いですが、もっと大切にするものが沢山ありますよね。
話は変わりますが、モーツァルトのピアノ曲が2曲発見されたそうですね!
早く演奏が聴きたいです。
投稿: アルトともみ | 2009年7月26日 (日) 02時43分
日本近代音楽館の存在を知らない人は、プロ奏者でも結構多いみたいですね。それだけ日本の作曲家の作品に対する、世間の関心が低いという事なのでしょう。でも「アニメの殿堂」に百数十億もかける前に、こうした散逸の危機に瀕している我が国の先人たちの貴重な文化遺産を守る事こそ、国はまず考えるべきではないか、と私は思うのですが。
投稿: ひなあられ | 2009年7月26日 (日) 12時35分
探し物をしていて貴サイトを拝見しました。
日本近代音楽館の件、同感です。残念です。
しかしながら国(行政)での管理・運営には責任感を含めてのスキルに大きな問題があると考えます。補助金が有効だとも考えますが。まあ、お役人には何も期待できませんが、何よりも私個人レベルでの非力が悔やまれました。
まだ利用可能期間ありますので、足を運ばれてみてはいかがですか。
少し、気になったので初コメントさせて頂きました次第です。
投稿: トッカータ | 2009年8月21日 (金) 16時27分